沖縄近海で最大マグニチュード(M)9・0の巨大地震発生を想定し、県内の津波浸水予測の見直しを審議してきた県津波被害想定検討委員会(委員長・津嘉山正光琉球大名誉教授)は28日の第4回会合で、内陸へ津波がかけ上がる高さを表す「遡上(そじょう)高」が、県内沿岸域の大半で前回5年前までの予測を超える検討結果をまとめた。浸水範囲も沖縄本島中南部の東海岸、那覇市や豊見城市の埋め立て地域のほか、石垣島南東部や宮古島南西部など各地で広がり、竹富町の黒島は全域にわたって浸水すると算出した。

 地域の防災計画やハザードマップなどへの活用を見据え、県海岸防災課はこの結果を2月中旬から市町村へ随時提供するほか、3月中にホームページでの公開を目指す。

 検討委は東日本大震災を受け、2006年度、07年度に実施した予測の見直しを目的に、昨年1月に発足した。今回は本島東方沖から与那国島南西沖までの南西諸島(琉球)海溝側、本島北西沖から与那国島北方沖の沖縄トラフ側、1771年の明和の大津波をもたらした八重山地震の震源として再現した断層など15カ所で地震発生を想定。前回はM7・8〜8・0だった地震規模もM7・8〜9・0に設定し直した。

 その結果、県内の代表的な沿岸地点135カ所のうち、石垣市や竹富町の一部を除く129カ所で前回を上回る遡上高を予測。県内最大は石垣市大里の34・9メートルで、本島内では国頭村安田の31・7メートルが最大とした。第1波到達時間は石垣市平野が3分で最も短く、久米島空港が4分で続いた。最も遅いのは宮古島市大浦湾の44分となった。

 このほか検討委は地震や津波の発生時期、規模は正確な予知が難しいとも指摘した。津嘉山委員長は「沖縄は地震の空白域というイメージをもたれがちだが、大地震発生の可能性を十分に知り、普段から備えてほしい」と強調。琉球大工学部教授の仲座栄三委員は「予測結果で浸水域外であるからといって、安全が保証されたわけではない。海抜が低い地域では、地震後すぐに避難を」と想定にとらわれないよう呼び掛けた。